英語圏の苦悩と日本語圏の冷淡: Gabをめぐる東西の深い無理解

Gabがマストドンのフォークに移行したことで、いろいろと騒動になっているようだが、まずは私たちは、過去から学ぶ必要がある。

みなさんはGNUsocial AXISを覚えているだろうか? 2017年4月のマストドンブームの時期に、Gargronが複数のGNU socialのインスタンスをブロックしたことが騒動になった。特に問題なのは、Gargron自身のインスタンスであるmastodon.socialのみならず、複数のインスタンスが「ブロックリスト」を共有し、それに追随したことである。ブロックされた側である、GNU socialの複数のインスタンスは、GNUsocial AXISを自称し、The GNUsocial Axis Resolutionsという檄文を発表した。アノニマスもそれに便乗して見解を表明している

Pleromaは文化的にはGNUsocial AXISの流れを汲んでおり、GNUsocial AXISの関係者がPleromaの開発者をしていることが多い。特に、Pleromaの創始者であるlainが代表例である。とはいえ、Pleromaの開発者にも多様性があり、例えばkaniiniは、ヘイトスピーチの規制と厳格なモデレーションを主張している。

Gargronとlainはいずれもドイツ在住であり、歴史修正主義それ自体が違法である環境に置かれている。だから、この二人の行く道を分けたのは、法的問題というよりは、人間としての信条によるところが大きいと思われる。

ところで、話は変わって、SwitterHumblrについても触れておこう。2017年4月のブームが過ぎたあとで参入して、大きく成長したインスタンスといえば、これらを挙げないわけにはいかない。同様のコンセプトのインスタンスは複数あり、例えばsinblr.comもにぎわっている。これらは、アメリカ合衆国がセックスワーカーのインターネットの利用を規制したことと、Tumblrがポルノを禁止したことへの反発が原動力になっている。ポルノがコンセプトのインスタンスといえば、マスタベ丼とやってることは変わらないのだが、ちゃんとポルノをアップロードするユーザーがたくさんいる (無断転載を含めて!) のがおもしろい。やはり刑法175条が悪い気がする。いずれにせよ、私はポルノを愛好しているが、お上品な人たちからはあまり快く思われないだろう。世界の嫌われ者はネトウヨだけではない。

ポルノといえば、PawooBaraag、あるいはpl.smuglo.liのように、児童ポルノ (安心してほしい。ここで扱われているのは、少なくとも日本では合法である) が主要なコンテンツであるインスタンスも流行している。Pawooについては複雑な事情があるものの、ロリ絵師の移住が原動力の一つであることは疑いようがない。

ようやくGabの話をすると、英語圏のメディアが「ナチスなしのツイッター代替、最大の極右サイトの安住の地に」という記事を出したらしく、Gargronがおかんむりになっている。このような記事が出てしまうと、新たにマストドンを始めようとする人が二の足を踏むようかもしれない。とはいえ、2017年4月のブームを過ぎてからは、マストドンは長い長い黄昏にあり、威勢がいいのはセックスワーカーとポルノくらいだろう。ここまで来たら、人目を気にせず我が道を行くほうがいいかもしれない。

分散SNSというアイディアは反検閲と親和性の高い技術で、逆に言うと、不愉快な隣人たちを締め出し続けるのは苦労が多い。Gargronはその点で、技術的な選択を誤ったのかもしれない。

それはそうと、Gargronは、かつてGNUsocial AXISに対してそうしたように、マストドンの多数のインスタンスがGabをブロックすることを望んでいる。さらに、新しい展開としては、クライアントアプリの作者に対しても、Gabをブロックすることを呼び掛けている。また、これに対して、日本のインスタンスや、日本のクライアントアプリ作者が、Gabのブロックに消極的であったり、あるいはGabのブロックに批判的な意見を多く表明していることは、興味深い現象である。

しかし、私の意見としては、日本語圏のマストドンユーザーが、あまりに言論の自由に夢を見すぎており、ヘイトスピーチの規制に乗り気でないことについては、率直に言って失望している。多様な信念が共存する環境が可能であるとすれば、それは、すべての表現が自由であるとか、すべての信念が同様に尊重されるといった、古典的な自由主義では不可能である。私たちは、いつまでも言論の自由に夢を見ていることはできない。そのかわり、規制が必要な種類の言説があり、そのために私たちも行動しなくてはならないことを、認める必要がある。

2016年には、アメリカ合衆国ではドナルド・トランプが選挙に勝ち、連合王国ではBrexitが国民投票に勝った。英語圏の人々は、インターネットの極右がもはや不良の遊びではなく、ガチの政治的な勢力であることを学んだ。これに対して、日本語圏にいる私たちは、英語圏の人々と同じことを心配し、同じように行動する必要はない。

だからと言って、英語圏の人々が本気で心配していることを、我ら黄色人種が茶化したり、足を引っ張るようなことばかり言うべきではない。あるいは、日本語圏のインターネットは、より深刻な別の問題を抱えているが、それはおそらく、みなさんがそう聞いて想像するものとはまったく正反対のものであろうというのが、今の時点での私の見立てである。

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投稿者: Hakaba Hitoyo

墓場一夜

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