日本のマストドンインスタンス各位、GDPRにビビりヨーロッパ人を締め出す

違法か合法かではなく邪悪か善良かを考えて行動すべきだ。

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GDPR (General Data Protection Regulation) が2016年5月24日に発効、2018年5月25日に施行されることを受けて、日本のマストドンインスタンスに、EU圏内のユーザーを締め出す動きが広がっている。

GDPRについてはJETRO (日本貿易振興機構) の解説を読めばそれほど間違いはないと思う。ところで、プライバシーを保護するための規制であるGDPRがEU圏外のウェブサイト運営者にパニックを引き起こし、EU圏内のユーザーを締め出す動きが広がったことは、とても残念だ。

マストドンは、営利企業に支配されたウェブサイトと比較すれば、ユーザーのプライバシーを保護しやすい仕組みである。このことについてはGargron (マストドンの作者) とlain (Pleromaの作者) がそれぞれ解説している。

EUはプライバシーの権利を基本的人権として擁護する決意を固めており、GDPRはその手段にすぎない。私たちはユーザーデータをロシアの選挙コンサルタントに売ることはないし、著作権窃盗者の収入源となるアドネットワークに参加することもない。結局のところ、私たちはプライバシーの権利という本質的な価値観をEUと共有している。形式的な規則に違反しているかどうかは些細な問題にすぎない。EUの職員は馬鹿ではないのだから、「良いこと」をしているウェブサイト運営者に対して形式的にGDPR違反を適用して罰金を課すことは、絶対にあり得ない。

それでも私たちは、自分自身が規則に違反していないことを確認して安心したいかもしれない。しかし、それは法と規則に対する愛が行きすぎているように思われる。私たちは法と規則を題材にした論理パズルに熱中すべきではないし、形式的な違反を回避するために別のより重大な罪を犯すべきでもない。実際のところ、善良であることは合法であることよりもはるかに重要である。確固たる信念のもとにあれば、いかなる罰を受けても笑っていられるはずだ。

GDPRの違反者には2000万ユーロまたは年間売上高の4 %の罰金を課すことが可能である。しかし、これはGoogleやFacebookのような巨人と戦うために設定された金額であって、ピクシブやドワンゴのような地元資本を想定したものではない。ましてや、非営利の個人が運営しているウェブサイトについては、何かを心配するほうが馬鹿げている。

私たちが自由とプライバシーを愛するかぎり、同じ価値観を共有する全世界の人々に、言語と国境の壁を越えて、ウェブサイトのアクセスを開放すべきだ。マストドンのインスタンスからEU住民を締め出すべきではない。

参考文献

アジテーション駆動開発: その機能に理由はあるか?

駆動開発という接尾語は19世紀末には死語となっていたようであるが、リバイバルを試みたい。以下はアジテーション駆動開発の例である。

明らかにアジテーションがプログラミングよりも先に行われていたのはこの3件くらいで、他はアジテーションが後付けになったり、プログラミングと平行したりしている。

アジテーションのないプログラミングはユーザーに対する媚びだという信念でやっていく。後付けでもいいからアジテーションをやっていけ。

インスタンス管理者と異常者の戦い: 主治医になれない私たちのための精神医学

マストドンのインスタンス管理者がインターネットの異常者と戦うための一助として、インターネット異常者の類型というスライドを書いたことがある。

私の父は医者で、内科医ではあるが、精神病院で入院患者の体調管理をしていた時期が長い。私が子供のころには西丸四方の著書が自宅にあり、精神疾患の存在を身近に感じていた。

西丸四方のエッセイは読みやすく、医学の知識のない読者にも親しみやすい。ただし、当時の医療水準は現在とは異なるため、知識としてそのまま活用することはできないだろう。『異常性格の世界』は、精神疾患と「変わり者」を連続したものとして描写し、たいへんユニークであった。「金魚にも精神分裂病 (当時の名称) がいる」という観察は、生物学的に正確とは思えないが、印象深い。

私たちは医者ではないので、インターネットの異常者を治療することはできない。精神医学の知識が役に立つとすれば、あらかじめ知識があることによって、最初の衝撃を受け流すことができるくらいである。

これは個人的なことだが、父であると同時に主治医であること、子であると同時に患者であることは難しい。

いずれにせよ、すべての異常者を閉鎖病棟に閉じ込めておくことはできないのだから、私たちはマストドンのインスタンスを含む複数の場所で、異常者とのインタラクションを分担しなければならない。顔認識システムを用いて入店と同時に追い出すのは最悪である。

飲食店の感動ポルノ化に悪辣な皮肉

インターネットでは感動ポルノと私刑の結び付きが容易である。

接客従事者の苦労自慢が監視社会の実現に結び付いた古典的な例として、リカオンの顔認識システムが挙げられる。リンク先で挙げられている「迷惑行為」には、迷惑ではあっても犯罪とまでは言えないものや、通常の利用客との線引きが難しいものが多く含まれている。また、実際に迷惑行為がなかったとしても、店員の判断により「迷惑客」の登録が可能である。このことから、客観的には迷惑行為とは言えなくても、たまたま従業員とトラブルになった利用者が「迷惑客」として登録される事態は十分に予想できる。

特に、飲食店の苦労自慢はインターネットで感動ポルノとして消費されがちである。そのため、ドタキャン防止システムと称する私刑プラットフォームの出現は、自然な発想であった。

漫画村を含む特定3サイトのサイトブロッキングが閣議決定された問題についても、私はかつて「著作権窃盗者との戦いを感動ポルノとして盛り上げていったら、インターネットの検閲が待ち構えていた」と評したことがある。

ところで、架空の飲食店の架空のドタキャンがインターネットで演出されるという事件が発生した。飲食店の苦労自慢が感動ポルノとして消費されがちな近年のインターネットに対する、悪辣な皮肉である。事実は啓蒙よりも暴力として作用する、とはいえ、フェイクニュースによってワールドワイドウェブを汚染することは、あまり褒められたものではない。毒をもって毒を制するとでも言うべきか。

架空の一般社団法人という戦術には親近感がある。5ちゃんねるの「国際信州学院大学」に対して、一般社団法人LGBTPZN協会設立準備会も、「山形福祉大学」という大学名を架空の役員の所属先として記載していた。

この記事は義憤というよりは熱狂的な死の舞踏に属するものなので、特に真面目な提言などはありません。これで終わりです。