脱中央集権のためのデザイン: セレブのためのインターネットを99 %の手に取り戻す

Mastodon 2 Advent Calendar 2017 の12月25日の参加記事。

概要

昨今のワールドワイドウェブ、特にCGM (consumer generated media) では、知名度のあるユーザーに視聴が集中する現象が起きている。これをセレブのインターネット (internet of celebrities) と呼ぶことを提案する。ところで、マストドンを含む分散SNSの理念に脱中央集権 (decentralization) がある。これは普通、複数のインスタンスが連合を形成することで権力を分散することを指すが、私はこれに加えて「ユーザーの脱中央集権」が必要と考えている。これは前述のセレブのインターネットに対抗するものである。

ユーザーの脱中央集権に逆行するデザインの一例として、フォロワー数順のユーザーランキングが挙げられる。確かに、フォロワー数の多いユーザーのトゥートは、愉快であったり有意義であったりする見込みは高い。しかし、同じように有意義なトゥートを発信するユーザーであっても、あらかじめ知名度がなければ着目されることは稀である。

ここで、ユーザーの脱中央集権に貢献するデザインを「累進的」、ユーザーの脱中央集権に逆行するデザインを「逆進的」と呼ぶことを提案する。これは、税制の分野において所得の再分配の効果があるかどうかを表す用語を転用したものである。本稿では、マストドンに関係するさまざまなデザインについて、その累進性と逆進性を検討する。

セレブのインターネット

昨今のワールドワイドウェブ、特にCGM (consumer generated media) では、知名度のあるユーザーに視聴が集中する現象が起きている。これをセレブのインターネット (internet of celebrities) と呼ぶことを提案する。

セレブのインターネットを象徴するウェブサイトとして VALU が挙げられる。VALU はインターネットでの知名度を (ビットコインを経由して) 換金するシステムである。岡田有花が VALU を退会するために仮想株式をすべて買い戻した ことは記憶に新しい。VALU のパロディーである NILU でさえ、ぬるかる、結城浩、高橋直大といったインターネット有名人の仮想株式が (無価値であるにもかかわらず) 大量に取引され、ある種の虚栄心可視化ツールとして機能している。

インターネットのアプリケーションは、しばしば電話のようなものとして想像されたり、テレビのようなものとして想像されたりする。CGM は原理的には電話でもテレビでもないはずであるが、実際には電話かテレビとして使われることが多い。有名な SNS のうちでも LINE は電話そのものである (そのため、LINE はそもそも CGM ではない)。CGM であることを意図してデザインされたウェブサイト、例えばツイッターであっても、仲間内での雑談や連絡のために使われることの方が多数派であるように思われる。

CGM は、また、テレビのようなものとして使われてしまうことも多い。主要なコンテンツが「公式コンテンツ」、すなわち、巨大な資金と人員を投入して製作されたコンテンツであることはよく見られる。もっとあり得るのは、著作権を侵害しているコンテンツ、すなわち、巨大資本が製作したコンテンツをユーザーが無断でアップロードしたものが CGM として扱われている場合である。

CGM をテレビのようにしてしまう要因には、有名人すなわちインターネットセレブの存在も挙げられる。インターネットセレブは、媒体によってアルファブロガー、アルファツイッタラー、ユーチューバーなどと称される。アルファツイッタラーという用語は、当初はアルファブロガーのパロディーであった。インターネットセレブはインターネットの外部 (オールドメディア、典型的にはテレビ) ですでに有名であった者が多く、インターネットのコンテンツで成り上がった者はいまだに少数派である。

私の経験では、ツイッターで情報を発信していても、アルファツイッタラーに RT されたときだけ RT が伸びるという現象を常に体験していると、情報を発信することに虚無を感じがちである。それよりはむしろ、単なる消費者・視聴者に徹する方が精神衛生に良い。(具体的には、これは vaginaplant と todesking の関係である。百合だ。)

マストドンはセレブのインターネットか?

では、マストドンはセレブのインターネットだろうか? 現在のマストドンは、アルファマストドナーと呼べるほどの巨大なユーザーは存在しないように思える。そもそも、マストドンのユーザー数は (Pawoo や JP のような大規模インスタンスを含め連合をすべて合計したとしても) インターネットセレブが出現するほどの母数がない。あるジャーナリストによれば、マストドンの現状のユーザー数では、広告代理店は採算が取れないので動かない、とのことである。

一方、アルファマストドナーの存在を示唆する意見もある。mstdn.jp Advent Calendar 2017ぐすくま氏の記事 では、岡田斗司夫のいう評価経済社会の概念を援用し、「現在のマストドンは、一部の人気ユーザーに評価が集まる、小さな評価経済社会が構成されている」という認識を示している。評価経済社会という用語を使わなければ、これはセレブのインターネットそのものである。

2017年10月22日発売の同人誌「対膣煽り: マストドンと分散SNSの熱狂と苦悩」には、「ポストエイプリルなマストドンでインスタンスを新たに開設するにあたっては、鯖管のインターネットにおける知名度が重要になりつつある」と書かれている。実際にこの記述を彷彿とさせるインスタンスもいくつか見受けられる。マストドンは、セレブのインターネットそのものとまでは行かないまでも、プチセレブと呼ぶべきユーザーは存在すると見てよいだろう。

デザインの累進性と逆進性

いずれにせよ、セレブのインターネットを打破し、ユーザーの脱中央集権を実現するためには、小規模なインスタンスや、無名のユーザーに光を当てていく必要がある。ここで、ユーザーの脱中央集権に貢献するデザインを「累進的」、ユーザーの脱中央集権に逆行するデザインを「逆進的」と呼ぶことを提案する。これは、税制の分野において所得の再分配の効果があるかどうかを表す用語を転用したものである。

逆進的なデザインに共通するパターンとして、シュリンクラップ効果、大御所効果、正のフィードバックの3点が挙げられる。

シュリンクラップ効果とは、知名度とタイトルだけを見て選択しなければならない状況がもたらす逆進性である。この名称の由来は、立ち読み防止のため書籍をシュリンクラップしている書店があることである。

大御所効果とは、過去に人気のあったインスタンスまたはユーザーが、その後も知名度を増やし続ける効果である。この名称の由来である大御所とは、征夷大将軍を引退した者の敬称である。

正のフィードバックとは、ある現象がその現象それ自体の原因となることで、時間の経過とともに影響が際限なく発散していくことを意味する。

インスタンス一覧の累進性と逆進性

日本語圏のマストドンではインスタンスの一覧が乱立している。インスタンスの一覧の一覧のような記事も、いつもの匠によるもの墓場人夜によるものマストドン日本語ポータルによるもの が知られている。では、乱立するこれらのインスタンスの一覧について、その累進性と逆進性を見ていこう。

登録ユーザーが多い順

実用的なインスタンス一覧のうち、最も逆進的なのが、登録ユーザーが多い順に配列しているリストである。この逆進性には複数の理由がある。第1に、登録ユーザー数とは、そのインスタンスに少しでも興味を持って登録した人の数である。これは、そのインスタンスの知名度そのものであり、必ずしもそのインスタンスが実力で獲得したものではない。興味を持って登録したものの、実際には魅力がなかった場合、ユーザーはそのインスタンスを離れていくかもしれないが、それによってユーザー数が減るとは限らない。

第2に、ユーザー数が過去からの累積であることである。これにより、開設時期が古いインスタンスは有利である。特に、2017年4月のブームの時期にマストドンのユーザーが急激に増加したことを考えると、その時期に存在したインスタンスはそれだけで有利になる。

第3に、登録ユーザーが多い順に配列されたインスタンス一覧を見て、それを参考にインスタンスに登録するという行動を取るユーザーがいると、正のフィードバックが発生することである。これにより、少数のインスタンスに多数のユーザーが集中することになるであろう。

登録ユーザーが多い順に配列されたインスタンス一覧には、日本のマストドンインスタンスの一覧マストドン検索ポータル などがある。

トゥートが多い順

トゥートが多い順の配列は、登録ユーザー数が多い順と比べれば、逆進的ではない。なぜなら、登録ユーザー数は少しでも興味を持った人の数であるのに対して、トゥート数は、実際にそのインスタンスの実態を経験したうえで、トゥートという能動的な行動をとったことを反映しているからである。

しかしながら、過去からの累積であることと、正のフィードバックが発生することは、登録ユーザー数が多い順と同じである。トゥートが多い順の配列は、やはり大いに逆進的であると言わざるを得ない。

トゥートが多い順をデフォルトの並び順としているインスタンス一覧は知られていないが、Mastodon Instance List はトゥートが多い順にソートすることができる。

収録が古い順

続いて、インスタンス一覧に収録された日時が古い順に配列されているリストを考える。このようなリストは、末尾に新たなインスタンスが追加されることを除けば、常に同じインスタンスが同じ順番で見えている。

このリストはユーザーの行動によって順序が変動しないので、ユーザーの行動によって正のフィードバックが発生することはない。そのため、登録ユーザーが多い順、トゥートが多い順に比べれば、逆進性は低い。しかし、古参インスタンスにユーザーが集中する可能性を考えると、やはり逆進的であると言える。

インスタンス一覧に収録された日時が古い順に配列されているリストとして、日本Mastodonインスタンス一覧 が知られている。また、2017年11月6日までの joinmastodon.orgMastodon Instances に登録された日時が古い順であった。joinmastodon.orgは古参インスタンスを優遇していた も参照。

手動で作成されたリスト

手動で作成されたインスタンス一覧の逆進性と累進性は、作者の心がけ次第である。しかしながら、作者による主観評価は、しばしば知名度や登録ユーザー数に影響されがちである。また、作者による更新が停止した場合には、その時点までに存在したインスタンスのみが掲載されるため、新興インスタンスにとっては相対的に不利になる。

これらの理由から、現時点で知られている手動で作成されたインスタンス一覧は、かなり逆進的であると指摘せざるを得ない。

手動で作成されたインスタンス一覧には、Иagiによるもの (スプレッドシート抜粋)、童貞ペンギンによるもの (三大インスタンス編中規模インスタンス編小規模インスタンス編)、takimuraによるものおかず◎によるもの が知られている。

流速が速い順

ここで流速とは、一定時間あたりのローカルタイムラインのトゥート数のことである。流速が速い順に配列されたリストは、これまで見てきたような逆進性の原因を、かなり排除することに成功している。第1に、流速は直近3時間 (分散SNSフォーラムの実装) の観測値であるので、過去の累積が無関係である。そのため、先に開設されたインスタンスが有利になることはないし、2017年4月のマストドンブームの状況を引きずることもない。第2に、流速はトゥートという能動的な行動の結果なので、知名度や話題性ではなく、実際にそのインスタンスが活発であるかどうかを見ることができる。

しかしながら、もしユーザーがこのリストをもとにインスタンスを選択した場合、やはり正のフィードバックが発生する。流速が速い順に配列されたリストは、やはり逆進性があると言える。

流速が速い順に配列されたインスタンス一覧は、分散SNSフォーラム のものが知られている。また、デフォルトの並び順ではないが、マストポータル は流速順に切り替えることができる。

ランダム

ランダムに配列されたインスタンス一覧は、逆進性と累進性について中立である。

ランダムに配列されたインスタンス一覧には、Mastodon Instancesjoinmastodon.org (2017年11月6日以降)、ムトー などがある。また、インスタンス一覧ではないが、分散SNSフォーラムのローカルタイムラインビューア は、ランダムに選択されたインスタンスのプレビューを見ることができる。

収録が新しい順

収録が新しい順に配列されたインスタンス一覧は累進的である。なぜなら、新興のインスタンス、あまり知られていないインスタンスも、限られた期間ではあるがリストの先頭に掲載されるからである。

この累進性はわずかに不完全である。すでに多くのユーザーを獲得したインスタンスが、後になってインスタンス一覧に登録されれば、やはりリストの先頭に掲載されるからである。

収録が新しい順に配列されたインスタンス一覧は、Mastodon Instance Listマストポータル が知られている。デフォルトの並び順ではないが、日本のマストドンインスタンスの一覧 は新着順に切り替えることができる。

インスタンスの開設が新しい順

インスタンスの開設が新しい順に配列されたインスタンス一覧は、より確実に新興インスタンスをリストの先頭に表示するので、これまでに挙げたなかでは最も累進的である。

デフォルトの並び順ではないが、分散SNSフォーラムの新着順リスト は、インスタンスの開設が新しい順に配列されている。なお、分散SNSフォーラムの実装では、インスタンスの開設日時は、現存する最古のトゥートの日時で近似している。

ここまでのまとめ

インスタンス一覧を逆進性と累進性によって配列すると、以下の順になる。

  • (↑逆進的)
  • 登録ユーザーが多い順 (シュリンクラップ効果、大御所効果、正のフィードバック)
  • トゥートが多い順 (大御所効果、正のフィードバック)
  • 収録が古い順 (大御所効果)
  • 手動で作成されたリスト (シュリンクラップ効果、大御所効果)
  • 流速が速い順 (正のフィードバック)
  • ランダム (逆進性、累進性について中立)
  • 収録が新しい順
  • インスタンスの開設が新しい順
  • (↓累進的)

流速が速い順のインスタンス一覧は、逆進的ではあるが、インスタンスの活発さを反映しているという利点がある。そうでなければ、中立または累進的なインスタンス一覧を使うべきである。

逆進的な配列を逆順にすると累進的になり、累進的な配列を逆順にすると逆進的になる。そのため、理論的には、最も累進的なインスタンス一覧は、登録ユーザーが少ない順である。そのようなインスタンス一覧は知られていないが、作ってみるとおもしろいかもしれない。

2017年4月のマストドンブームにおいては、ユーザーの流入が多く、インスタンス一覧を参考にインスタンスを選択する機会も多かったであろう。その時点で存在したインスタンス一覧は、手動で作成されたリストまたは登録ユーザー数が多い順のリストであり、いずれもきわめて逆進的であった。この損失は永遠に埋め合わせることができない。

ユーザー一覧の累進性と逆進性

日本語圏においてインスタンスの一覧が乱立しているのに対して、ユーザーの一覧はあまり知られていない。自動化されたものでは User Localによるもの と 分散SNSフォーラムによるもの が知られている。手動で作成されたリストは いつもの匠によるもの が挙げられる。マストドンを始めたら誰をフォローすべきか? も参照。

また、ローカルタイムラインまたは連合タイムラインを流れてくるトゥートを見て、気に入ったユーザーをフォローするというユースケースを考えると、これらのタイムラインもユーザー一覧の変種であると考えられる。同様に、検索エンジン (マストドンリアルタイム検索tootsearch など) や、語彙が類似するユーザーを検索するシステム も、その逆進性と累進性をユーザー一覧と比較することが可能である。

なお、Mastodonおすすめユーザー検索は、本稿の掲載後にソースコードが公開されたため、逆進性と累進性の検討は今後の課題である。

フォロワーが多い順

最も逆進的なユーザー一覧は、フォロワーが多い順の配列である。第1に、あるユーザーをフォローするかどうか決めるとき、すでにその名前を聞いたことがあれば、フォローする見込みは大きくなる。すなわち、すでに何らかの手段で有名になっている人にとって有利な指標である。第2に、フォロワー数が過去からの累積であることである。過去に大量にフォロワーを獲得するだけの魅力があったとしても、現在それが維持されているとは限らない。単にフォロワーたちがフォローの解除 (リムーブ) を怠っているだけかもしれない。第3に、フォロワーが多い順に配列されたユーザー一覧を見て、それを参考にフォローするという行動をとるユーザーがいると、正のフィードバックが発生することである。これにより、少数のユーザーに多数のフォロワーが集中することになるであろう。

登録ユーザーが多い順に配列されたインスタンス一覧と、フォロワーが多い順に配列されたユーザー一覧にはアナロジーがあり、それらが逆進的である理由はほとんど同じである。

フォロワーが多い順に配列されたユーザー一覧は Mastodonランキング が知られている。

被ブーストが多い順

被ブーストが多い順に配列されたユーザー一覧は、フォロワーが多い順の配列と比べれば、逆進性は緩和される。なぜなら、トゥートをブーストするということは、実際にそのトゥートが魅力的であると判断したことを意味するからである。

逆進性の他の要因、被ブースト数が過去からの累積であることと、正のフィードバックを発生させることは、フォロワーが多い順の配列と同様である。

トゥートが多い順に配列されたインスタンス一覧と、被ブーストが多い順に配列されたユーザー一覧にはアナロジーがあり、同程度の逆進性がある。

デフォルトの並び順ではないが、Mastodonランキング は被ブーストが多い順に配列することができる。

有名人のリスト

有名人のリストは、セレブのインターネットそのものである。しかしながら、正のフィードバックが発生するおそれがないことから、逆進性は緩和される。

有名人のリストとして いつもの匠によるもの が知られている。ただし、作者自身がその限界を指摘している

連合タイムライン

連合タイムラインは、同じインスタンスのユーザーがフォローしているユーザーのトゥートと、同じインスタンスのユーザーのトゥートの和集合である。前者はフォロワーが多い順に配列されたユーザー一覧と同程度の逆進性があり、後者はローカルタイムラインそのものである。すなわち、連合タイムラインは、フォロワーが多い順に配列されたユーザー一覧と、ローカルタイムラインの中間の逆進性を持つ。

流速が速い順

流速が速い順に配列されたユーザー一覧は、これまで見てきたものよりは逆進性が緩和される。第1に、流速は、過去の蓄積を反映せず、現在の状態のみを評価する。第2に、過去の名声や知名度にかかわらず、誰でも努力次第で獲得できる指標だからである。

しかし、流速が速い順に配列されたユーザー一覧についても、その逆進性を指摘する必要がある。なぜなら、インスタンスの文化は、流速の速い少数のユーザーの慣れ合いによって形成されている側面があるからである。そのようなユーザーがインスタンスの文化と治安に貢献するところは大きいが、ある種のプチセレブであるとも言える。

流速が速い順に配列されたインスタンス一覧と、同じく流速順に配列されたユーザー一覧にはアナロジーがあり、同程度の逆進性がある。

流速が速い順に配列されたインスタンス一覧は 分散SNSフォーラムによるもの が知られている。

ローカルタイムライン

ローカルタイムラインの逆進性は、流速が速い順に配列されたユーザー一覧とほぼ同等である。なぜなら、流速が速い順に配列されたユーザー一覧は、一定時間あたりのローカルタイムラインのトゥートを数えているからである。ただし、流速が速い順に配列されたユーザー一覧が流速の数値のみを表示するのに対して、ローカルタイムラインはトゥートの内容を表示するので、逆進性はわずかに緩和される。

語彙が類似するユーザーを検索するシステム

語彙が類似するユーザーを検索するシステムは、内部のアルゴリズムが複雑であるので、逆進性を評価することが難しい。後述の検索エンジンとほとんど同等の逆進性を持つが、語彙が類似するユーザーを検索するシステムがユーザーの一覧を表示するのに対して、検索エンジンはトゥートの内容を表示するので、語彙が類似するユーザーを検索するシステムの方がいくぶん逆進的である。

語彙が類似するユーザーを検索するシステムとして マストドンユーザーマッチング が知られている。

検索エンジン

検索エンジンの逆進性は、ローカルタイムラインとほぼ同等である。なぜなら、トゥートの数が多ければ、検索エンジンでヒットすることも多くなるからである。しかしながら、検索に用いるキーワードによって、ヒットするユーザーは変化するため、逆進性はローカルタイムラインよりも緩和される。

マストドンを対象にした検索エンジンは、マストドンリアルタイム検索tootsearch が知られている。マストドン検索ポータル は有名だが、マストドン 2.0.0 以上のインスタンスを検索できないなど、不具合が多い。

ランダム

ランダムに配列されたユーザー一覧は、逆進性と累進性について中立である。

ランダムに配列されたユーザー一覧の実例は知られていない。

新着順

新たにマストドンを始めたユーザーの一覧は、これまでに挙げたユーザー一覧のうちで最も累進的である。

新着順のユーザー一覧の実例は知られていない。新規のユーザーに積極的に話しかける文化 (「しんかこ」と呼ばれることがある) は、これと同様の累進性があると思われる。

ここまでのまとめ

ユーザー一覧を逆進性と累進性によって配列すると、以下の順になる。

  • (↑逆進的)
  • フォロワーが多い順 (シュリンクラップ効果、大御所効果、正のフィードバック)
  • 被ブーストが多い順 (大御所効果、正のフィードバック)
  • 有名人のリスト (シュリンクラップ効果、大御所効果)
  • 連合タイムライン
  • 流速が速い順
  • ローカルタイムライン
  • 語彙が類似するユーザーを検索するシステム
  • 検索エンジン
  • ランダム (逆進性と累進性について中立)
  • 新着順
  • (↓累進的)

ランダムまたは新着順のユーザー一覧が知られていないのは驚くべきことである。ランダムは逆進性と累進性について中立、新着順は累進的であるのに対して、他の配列はすべて、程度の差はあるものの逆進的であるからである。

インスタンス一覧の乱立とも言うべき状況と比較すると、未知のユーザーを発見する手段そのものが未発達である。そのため、最も逆進的な、フォロワーが多い順のユーザー一覧でさえ、未知のユーザーを発見する手段として貴重である。いずれにせよ、もしそのようなシステムを新たに開発する機会があれば、できる限り累進的なデザインを採用することが必要である。

将来の構想

セレブのインターネットに対抗するイデオロギーとして、生存のインターネット (internet of subsistence) というアイディアを構想している。

インターネットにおいて情報が無料であることが常識であった時代は過ぎ去り、クリエイターがファンから現金を受け取ることができる仕組みが普及している。PatreonEntyファンティア などのマンスリードネーションプラットフォームは、毎月決まった額を寄付する仕組みであるので、単発の寄付と比べると、より確実に寄付金を集めることができる。マストドンの開発者とインスタンス運営者は、これらのマンスリードネーションプラットフォームで資金を得ている者が少なくない。知名度を換金するシステムである VALU や、物品を換金するシステムである メルカリCASH なども含めて、マネーのインターネットとも言うべき流行が形成されている。

しかし、マンスリードネーションプラットフォームで寄付を得るためには、クリエイターとして作品を発表するだけでなく、あらかじめ知名度があることが必要である。実際には、少数のインターネット有名人に寄付が集中する一方で、寄付金ゼロのクリエイターが大半を占めている。

寄付する側の可処分所得は有限なので、すべてのクリエイターが満足するような分配は不可能である。しかし、少数のインターネット有名人に寄付が集中することを避け、より多くのクリエイターに寄付を分配することは可能だろうか?

ここで、漫画家で、シェアハウス界隈の有名人でもある小林銅蟲の発言を見てみよう。小林銅蟲によれば、シェアハウス界隈に迎え入れられるためには本人に卓越した「面白さ」が必要であり、そうでない者は巧妙に追い出されるという。すなわち、シェアハウス界隈は、面白を生存に変換する装置であると言える。では、卓越した面白があるわけでもない普通のインターネットユーザーが、それでもなおインターネットでの活動を生存に変換していくには、どのようなデザインが考えられるだろうか?

生存のインターネットの一例として Reduce Go が挙げられる。これは、月額1,980円を支払うと、近隣の飲食店で余剰食品を受け取ることができるというシステムである。月額1,980円は決して安くはないが、食料調達の心配をせずに生きていけることの利点は大きい。

また、第2回分散SNSフォーラム で発表された 分散Uber、分散Airbnb、分散就活サイト などのアイディアも、生存のインターネットに近い発想である。

ここで、EntyとReduce Goのシステムを結合し、Entyの1,980ポイントをReduce Goの1ヶ月のサービスと交換できる機能が実現したとしよう。現金を介さず「ポイント」で決済することの利点として、銀行などの手数料が不要になることが挙げられる。また、複数のReduce Goアカウントを持っていても意味がないので、月に1,980ポイントを超える寄付を受けた者は、翌月に持ち越すか、それでも使い切れなければ他のクリエイターへの寄付に回ることになる。これにより、少数のクリエイターに寄付が集中することを避けられる。

マンスリードネーションプラットフォームで寄付を集めるためには、情報発信と宣伝の手段として、Twitterなどのミニブログが欠かせない。Twitterが衰退したり、過酷な言論統制を敷いたりすれば、マストドンなどの分散SNSが重要な代替手段になるだろう。このとき、少数の有名人に寄付が集中することを避けるためには、分散SNSが累進的なデザインを採用することが必要である。

結論

本稿では、セレブのインターネットとも言うべき現状に抵抗するため、ユーザーの脱中央集権というイデオロギーを提案した。そして、ユーザーの脱中央集権を推進するか阻害するかによって、デザインの累進性と逆進性を定義した。具体的な検討として、マストドンのインスタンス一覧とユーザー一覧について、それぞれの累進性と逆進性を評価した。

さらに、将来の構想として、生存のインターネット (internet of subsistence) というアイディアを提案した。生存のインターネットを実現するためには、インターネットを利用したアプリケーションを開発するにあたって、あらかじめ累進的なデザインを採用することが必要である。

建物をいきいきさせる、健康な洗っていたアライグマを洗うこともある。建物の内部でさまざまなものを鋭い爪で形成し、多い、いろいろな角度の、クリエイティヴなフナクイムシのようだった、洗っていたアライグマを、今度は私達が夜、洗う日が来るだろう。私の爪は尖っていて鋭く、きらきらとして塩水に濡れている。茶色い湿った生物がいるのだ。飼育するのは容易ではない。水槽から外に出てくる紫色のいきものが素晴らしい。細胞は感動的だ。健康な増殖する死なない殺さない、暗い塩味の塩水で、詳しく解析するような心持ちで、冷たい、冷えたアライグマを水に漬け、保存する、ゆっくりと動かす腕の動きは海水の動きを受信していた。 (小笠原鳥類「走査」)

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投稿者: Hakaba Hitoyo

墓場一夜

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