Twitterを超える拡散力を目指して—分散型ミニブログYayaka19の紹介

分散型ミニブログ Yayaka19 を紹介する。ミニブログとは、ツイッター に代表されるような、短文を投稿することを目的とするSNS (ソーシャル・ネットワーキング・サービス) である。分散型とは、特定のサーバーに依存せず、複数のサーバーが相互に通信することでSNSを構成することを意味する。

ツイッターは、しばしば経営不振がささやかれるうえ、不可解な理由によるアカウントの凍結が問題になってきた。しかし、ツイッターはRT (リツイート) によって絶大な拡散力を持っており、すでに多くのフォロワーを抱える「アルファツイッタラー」が、その拡散力を捨ててまで他のSNSに移行することは現実的でない。

そこで、Yayaka19では、「ミステリーポスト」という仕組みを導入し、ツイッターのRTを超える拡散力を得ることを試みた。ミステリーポストは、タイムラインに流れてくるときはタイトルのみが見えており、本文を読もうとすると同時にRTしたことになるというポスト (投稿) である。これにより、ユーザー数ではツイッターに劣るとしても、拡散力でツイッターに対抗することが期待される。

また、Yayaka19では、特定の運営者による検閲あるいは言論統制を避けるため、分散型ミニブログとしての特徴も有している。すでに OStatusプロトコル による分散型ミニブログとして GNU Social やマストドン (Mastodon) が知られており、これから設計されるSNSは分散型の特徴を持つことが当然とみなされるだろう。

背景

ミニブログとは、ツイッター に代表されるような、短文を投稿することを目的とするSNS (ソーシャル・ネットワーキング・サービス) である。ツイッターでは、1回の投稿 (ツイート) が140字に制限されている。そのため、ツイートを気軽に発信することができ、また、大量のツイートを読むことも容易である。ツイッターでは画像をツイートすることもできる。この場合は、140字のテキストと均衡するように、見やすい大きさに縮小して表示される。

ツイッターのユーザーは、好きなユーザー (複数) をフォローすることができる。すると、フォローしているユーザーのツイートが、自分のタイムラインに表示される。

ツイッターの特徴はRT (リツイート) である。あるツイートをRTすると、そのツイートは自分のフォロワーのタイムラインに表示される。それを見たフォロワーがさらにRTすることで、ツイートが指数関数的に拡散することが頻繁に発生する。

現状の課題

しかしながら、ツイッター社はしばしば経営不振を指摘されている。その原因の一つは、ツイッターがいじめやフェイクニュースの温床になっており、それによりイメージの低下を招いていることである。これはリツイートの拡散力と表裏一体である。邪悪な、もしくは判断力の劣るユーザーが拡散力を手にすれば、いじめやフェイクニュースの拡散に加担することになりかねない。

このような悪評を払拭するため、ツイッター社は邪悪なユーザーの追放に血道を上げている。しかし、これは別の問題を発生させている。ツイッターのユーザーは、邪悪であると思われるユーザーを「報告」することができる。ツイッター社は、ある程度の数の報告が集まった場合には、ツイートを削除したり、アカウントを凍結したりといった対策を取る。ここで問題なのは、複数のユーザーが一斉に「通報」することで、特定のアカウントを凍結に追い込むことができることである。

日本では、非実在児童ポルノが広く愛好されていることが知られている。これらは性欲を満たすためだけでなく、「絵師」たちの創作意欲を刺激し、文化的にも価値のあるものである。しかし、ある種の反ポルノ主義者たちは、ツイッターで非実在児童ポルノを公開している絵師を集団で通報し、そのアカウントを凍結に追い込むという運動を行った。ツイッター社は非実在児童ポルノの文化的価値について無理解であり、反ポルノ主義者たちに追随して、絵師の凍結に加担した。これは、非実在児童ポルノを愛好する絵師の立場からすれば、表現の自由の侵害であり、検閲であり、言論弾圧である。

とはいえ、ツイッターのユーザー数の多さとリツイートの拡散力は、アカウント凍結の危険を補ってありあまるほど魅力的である。多くの絵師は、アカウントを凍結されたとしても、より自由な他のSNSに移行するのではなく、ツイッターのアカウントを「転生」することを選んできた。

自由なSNSとしては、OStatusプロトコル を利用した分散型ミニブログである、GNU Socialやマストドン (Mastodon) が知られている。分散型ミニブログは、複数のサーバーが互いに通信することでSNSを構成する。そのため、特定の運営者によって恣意的な運用や言論弾圧が行われることを阻止しやすい。なぜならば、あるサーバーが自由を侵害したならば、ユーザーが別のサーバーに移動することが容易だからである。

特に、pixiv が開設したマストドンインスタンスである Pawoo は、イラストを公開するサイトを母体としているため、絵師たちの楽園となっている。非実在児童ポルノを愛好する絵師たちのうち、ツイッターアカウントの理不尽な凍結を経験した者は、この新しいSNSを熱狂的に迎え入れた。

しかしながら、マストドンの熱狂的なブームを経た今でも、多くのアルファツイッタラーやユーザーはツイッターにとどまっており、自由なSNSの勢力がツイッターを凌駕したとは言い難い。これまで述べてきたツイッターの問題点、特に通報の濫用と恣意的な凍結を解決するには、自由で、なおかつツイッターに比肩する拡散力を持つSNSが必要である。

提案手法

ここで、私たちは、ツイッターのRTの仕組みをさらに改良することで、より強い拡散力を持つSNSを構築することを提案する。私たちは、その仕組みを「ミステリーポスト」と命名した。

ミステリーポストを投稿するには、タイトルと本文を記述する必要がある。ミステリーポストがタイムラインを流れるときは、タイトルのみが表示される。本文を読むためには、明示的にミステリーポストを「開く」操作が必要である。このとき、本文を表示すると同時に、ミステリーポストをRTしたことになる。すなわち、ミステリーポストを開いたユーザーのフォロワーに、ミステリーポストが拡散される。

ユーザーがミステリーポストの本文を読むためには、ミステリーポストの拡散に協力することが必要であるため、従来のRTよりも拡散されやすいことが期待できる。

実験

私たちは、ミステリーポスト機能を用いて、強い拡散力を持つ独自のSNSを構築することを試みた。ryo33 氏による Yayaka19 というSNSを母体に、ミステリーポスト機能を追加することで、拡散力の強化を企図した。

さらに、ryo33氏はYayaka19を分散型ミニブログとする改良を行った。これにより、サーバーの所有者が恣意的な運用や言論弾圧を行うことが困難になった。オリジナルの yayaka.net に加え、第2のサーバーである 19.fubaiundo.org が建設された。これらのサーバー群は、リモートフォローにより、一体のSNSを構成している。

議論

当初、私が提案したのは、タイムラインのツイートがモザイクで隠された状態で表示され、内容を表示した瞬間にリツイートしたことになる、という案である。当時、この機能は「モザイク」と呼ばれていた。ryo33氏はこの案を改良し、タイトルと本文を持つスタイルを提案した。また、機能の名称は「ミステリーポスト」となった。モザイクが自動的な画像処理により生成されるのに対して、タイトルを付ける行為はユーザーが主体的に行うものである。そのため、より多様で遊戯性のある文化が創造されることが期待できる。

ミステリーポストの拡散力は、SPAMなどの邪悪な目的にも利用できる。しかし、タイトルやユーザー名などから、何らかの「怪しさ」を感じ取ることは可能であると思われる。ミステリーポストの仕組みを持つSNSのユーザーは、ミステリーポストを不用意に開かないよう注意すべきである。それは自分自身のためだけでなく、フォロワーを失望させないためにも必要である。

ミステリーポストは、また、拡散に協力したユーザーの法的責任を軽減することが期待できる。ユーザーがミステリーポストを拡散した時点では、ユーザーはまだミステリーポストの本文を読んでいない。そのため、もしミステリーポストの本文に違法な情報が書かれていたとしても、その拡散に協力したことは故意犯ではない。(ただし、ミステリーポストのタイトルは、違法な情報の存在を示唆するものではないと仮定する。) これは、P2Pファイル共有ソフトウェアであるWinnyにおいて、キャッシュに違法なファイルが置かれていたとしても、Winnyの利用者が意図して置いたものではないという特徴に似ている。この場合、キャッシュの提供を通して拡散に加担したとしても、Winnyのユーザーは故意犯にはあたらない。なお、ミステリーポストは、拡散に協力したユーザーの法的責任を軽減する可能性があるものの、最初にミステリーポストを投稿したユーザーや、ミステリーポストの流通に使われたサーバーの運営者の責任を軽減するものではない。

結論

ツイッターに比肩する拡散力を有するSNSを構築するため、リツイートの仕組みをさらに改良した「ミステリーポスト」を提案した。さらに、分散型ミニブログとすることで、サーバー所有者による恣意的な運用を困難にした。オリジナルの yayaka.net に加え、第2のサーバーである 19.fubaiundo.org を運用し、実用に供した。

将来の課題

非常に残念なことに、Yayaka19は画像の投稿を実装していない。もし画像の投稿が実現すれば、非実在児童ポルノを愛好する絵師たちのために、自由で、かつ強力な拡散力を持つSNSを提供することができるだろう。実装した。Yayaka19に画像付きミステリーポストを投稿する方法

別の方法として、既存の分散型ミニブログにミステリーポストの機能を追加することも考えられる。主要な実装 (GNU Social、マストドンなど) に機能を追加する、OStatus Community Group の標準に追加するなどの展開が期待される。

参考文献

  1. マストドンに対抗して分散SNSを作った – ありえんHip-Hop
  2. 本の虫: ここらでもう一度マストドンについて語っておくか
  3. 高木浩光@自宅の日記 – P2Pの価値とは何なのだろうか
広告

投稿者: Hakaba Hitoyo

墓場一夜

“Twitterを超える拡散力を目指して—分散型ミニブログYayaka19の紹介” への 2 件のフィードバック

コメントは受け付けていません。